絵と猫とぐだぐだ ~髙木元就

雑記ブログです。趣味で絵を描いています。漫画やイラストなども含めて、幅広く絵の好きな人に読んで貰いたいです。

店長不在の店舗3 No.129

下がり止まる売上

 パチンコ店に居たとき以上に、カラオケ店の環境は狂っていた。

 普通に考えれば、こんな酷い扱いをしてくる会社や店舗の都合なんかを考えずに、職場を放棄して退職を強行すべきだったのだと思う。

 でも、新しく入社してきたアルバイト達のことを考えると、僕は退職を強行することは出来なかった。

 僕という人間は、本当にお人好しが過ぎている馬鹿なのだと思う。

 

 古くからいるアルバイト達は、主には平日の顧客が殆んどいない時間だけを選んで出勤しようとする。

 当人達の言葉上は「店の為に出勤してやっている」と語る。

 最初のうちは、そういう時間でも出勤させて、僕は雑務関係に手をつけてはいた。

 でも、その時間に古くからいるアルバイト達が出勤しても、仕事なんかは何もせずに過ごし、アルバイト達の立場を守る為に禁止してたことなんかを再び始めてしまう。

 その場面に新人が出勤していれば、古くからいるアルバイト達が従業員教育をしたがる。

 教える内容も、仕事のサボりかたや僕を利用して怠けるテクニックばかりが中心となる。

 S本部長からは『あの子(アルバイト)等は時期に辞める子だから、店の不必要な時間帯に出勤させなくてもいい。』と言われていた。

 そんな感じなので、僕も『客のいない時間帯にしか出勤できないなら、出勤しなくてもいいよ』と言って、そういう時間帯のシフト希望には応じなかった。

 その結果として、数ヶ月単位で1~2度くらいしか出勤しない者や、シフト希望以前に全く出席しない者なんかもいた。

「これでは稼ぎにならない」

「高木に虐められている」

 そんなことをS本部長に直接訴えてた者もいて、それを真に受けたS本部長は僕へ怒鳴り付けて怒ってくる。

 しかし、僕はここで引くことは出来ず、反論していく。

 S本部長には、カラオケ店の管理を適当にしてきたことや、僕にここで消えられると困るといった弱みがあり、この時ばかりは、いつもの様な強引な押し切りも出来なかった。

 そうして、僕とS本部長との口論の末、そのアルバイトは退職はしていくしかなかった。

 

 古くからいるアルバイト達がたまにしか出勤しなくなり、新人アルバイト達の人数も揃ってきた頃。

 店舗の売上の下がりが止まる。

 店舗にある記録は7年分位しかなく、その7年間は(前年同月比で)ずっと売上は下がり続けていた。

 その下がり止まりは数ヶ月続き、社長は「やっと止まった」と喜んでいた。

 その下がり止まりにの要因は、この時期の僕にもまだはっきりと理解はしていなかった。

 それでも何となく、それらしきものはわかり始めていた。

 簡単に述べてしまうと、長い間で店舗の管理が適当であった為、従業員達が売上を落とす要因を作っていたのだ。

 幾つもある要素のひとつには、過剰なサービスが大きかったと思う。

 この店舗は、地元でも「アルバイト達が好き勝手やっている店」と噂されていた店で、古くからいるアルバイト達の友人や知り合いであれば、幾ら飲み食いしても飲食代の記録をアルバイト達が消してしまう。

 だから、飲み食いの宴会をしても、カラオケをした時の室料しか払わなくて済む状態になる。

 アルバイト達の友人や知人ではなくても、ヤクザや恐い雰囲気を持った者達が値引きを求めれば、その度に値引きをしたり、店と顧客とのトラブルやクレームの度に値引きしたりもしていた。

 他にも、ヤクザ関係者が店長をしていた時からやられていたことで。

 レシートや領収書を必要としない顧客の精算時、アルバイト達(全員ではないだろうが)は顧客の利用料金の一部を着服して、少ない金額で精算処理をしてしまう。

 利用時間や、飲食したものの記録を消してしまえば、着服した記録もないままで、料金の誤差が出てくるのだ。

 この他にも、僕が把握していないだけで、何かしらやっていたことだろう。

 そういうものを僕に気付かれない様にする為にも、古くからいるアルバイト達は、僕には店の主導権を握られないようにして、嫌がらせをして辞めさせようと頑張ってもいた。

 その頑張りのひとつに、アルバイト達は地元の知り合いのヤクザへお願いして、僕を脅して店から追い出そうともしていた。

 その若いヤクザからは「お前(僕)のことは、近いうちに絶対ころしてやるから覚悟しておけ」という言葉を頻繁にかけられていて、僕は店舗やアルバイト達を守る意味合いで口論する。

 S本部長の方針のせいで、そのヤクザ達を簡単に警察へつき出すことも出来なかったが、そのヤクザ達が店に来る度に、僕も積極的に口論をしていった。

 だから、面倒事を起こす者程、店舗に来る機会はなくなっていった。

 ヤクザから「ころす」と言われても、僕は怯まずに言い返したり、会社や上司達には報告せずに警察に通報したりもしていたけれど、本音としては『いつかは報復として、何かをされるかも知れない。』と考え、ずっと恐い思いをしていた。

 そうやって来客数が減りながらも、売上が少しずつ伸びていくことに、当時は受け入れたくない様な複雑な思いをしていた。

 同時に、この売上の下がり止まりは、S本部長がカラオケ店の管理を任されたからだと評価される。

 

大幅な値上げ

 売上の下がり止まりをした時期というのは、アベノミクスという経済政策の話が持ち上がっていた時期でもあった。

 そのことから、S本部長は「もう景気が回復してきたんだ」「もう(この会社は)大丈夫だ」と語り、カラオケ店の値上げを断行する。

 このカラオケ店のある地域は、すぐ近くに山や墓地などもある田舎だった。

 カラオケ店の機材も10年くらい前のものを使い続け、社長の意向で機種変更(買い換え)をしない状況にあった。

 店の良さといえば、利用料金の安さくらいである。

 それを、街中の最新機種や最新設備で営業しているカラオケ店と同等の料金設定に変更するという。

 利用料金の額を書くのは控えるが、料金変更後は、それまでの料金の1.5倍となった。

 その話を僕が聞いた頃というのは、既に幹部達で話し合いを終え、社長の了承を貰って実施する直前だった。

 僕から何を言っても、もう会社の意向は変わらない。

 

 現場を把握していない者や、カラオケ店の現場で働いたこともない者達だけで値上げの議論をして、実施されたことである。

 値上げの実施後は、現場で働いている皆の予想通りの状況となった。

 利用料金が急に1.5倍になったことで、利用客からは精算時に毎日怒られ、人手不足や新人ばかりの従業員環境によるクレームも、それまで以上に多発する。

 不満やクレームばかりで、利用客も大幅に減っていった状況でも、2ヶ月は売上を伸ばし続けていた。

 でもそれ以降は、それまでの売上も維持できず、売上の下落は再び始まる。

 そんな状況を作ったS本部長だけど、やはりカラオケ店には殆んど来ないで、現場がどの様な状況になっているかの確認もしない。

 落ち込んだ売上額のデータだけは見て落ち込んでいる様だったが、他の細かなデータは見ない。

 それから少し時期が経つと、社長とS本部長とS課長からは「売上が下がり続けているのは、高木が使えないせいだ」と、再び責めてくる様になる。

 僕の立場からは、ずっと休日も休憩もなく働き続けている毎日で、理不尽に思うことばかりだった。

 会社の幹部達は、みんな自分等の都合や駆け引きでもの事を考えるばかりで、それで『松下幸之助の本も読み、従業員達を大切に扱っている』と語っているのだから、僕としても呆れていた。

 売上が上がれば上司の手柄となり、売上が下がれば僕の様な部下のせいにされる。

 それでも僕は、新しく入社してきたアルバイト達の立場を守ろうと奮闘していく。

 

 後の話となるけれど。

 暫くして、カラオケ店の料金は高すぎるとして、料金設定を改めた。

 しかし、値上げをして顧客が来なくなり、そこから値下げをしても、値上げ後に来なくなった顧客は一部しか戻ってこない。

 こういう利用料金の値上げや値下げは、そんな簡単な思い付きや閃きでやることではないと思う。

 一時、カラオケ業界で利用料金の値下げ合戦があった。

 僕の在籍していたカラオケ店の料金設定も、察するに、その値下げ合戦の影響を受けて設定したものだと思う。

 その辺りまで細かく書いていくと、また話しは長くなっていくので、そこはまたいつか機会があれば書くとして、この辺りで値上げ・値下げの話は区切ることにする。