絵と猫とぐだぐだ ~髙木元就

雑記ブログです。趣味で絵を描いています。漫画やイラストなども含めて、幅広く絵の好きな人に読んで貰いたいです。

店長不在の店舗2 No.128

カラオケ店の変化 

 M店長が居なくなってから、僕はアルバイト達へ状況を説明した。

『S課長はカラオケ店のアルバイト達を辞めさせようと、口実を探っている。

 アルバイト達は、何かがあってもS本部長が助けてくれると思っているけれど、S本部長自体はカラオケ店のことを面倒臭がっていて、自分の都合しか考えず、この状況を利用する考えはあっても、変えたり助けたりしていく意思はない。

 僕自体は、この状況をどうにかしようと動いていくけれど、アルバイト達の置かれている立場に関しては、アルバイト達が働き方を改めなければどうにもならない。

 僕のこの話をアルバイト達が聞き入れないのであれば、S課長が責め立てている様に、アルバイト達の居場所は奪っていく状況になる。

 でも、アルバイト達が働き方を改めてくれるのであれば、僕はアルバイト達の立場を守る方向で動いていく。』

 こんな説明をアルバイトの全員に行い、勤務時間中に事務所で眠ること、タバコをくわえながらの作業、仕事中の携帯電話の使用、店の食材を勝手(お金を払わずに)に食べること等々、僕は次々と禁止していった。

 説明した上で指示なので、表面的な部分では、従ってくれている感じだった。

 そのことで、アルバイト達の不満が募っていることも理解はしていたけれど、これはこれで、まだいい方だと考えていた。
 とはいっても、あるアルバイトの男子とも口論になり、僕は「何でこんな事も理解できないんだ!」と怒りながら、胸ぐらを掴んで振り回した事もあった。

 僕の禁止したことというのは、世間一般的に「そんなことを許している職場などあるのだろうか」等と思える程度のことばかりである。

 それでも、アルバイト達はみんな僕のことが嫌いであり、僕に対して協力する意思はないので、清掃や食材の仕込みといった雑務を手伝っては貰えないままだった。

 アルバイト達にもプライドや見栄などもあるのだから、そこまでは強要できないと思っていたし、僕個人がバカにされたままの状況も黙認した。

 

 でもこの変化には、事務員や清掃員が驚いていた。

 カラオケ店の社員が僕だけとなって、アルバイトがまともに働くようになったと、幹部達の所にも話は上がっていった。

 しかし、これを幹部達は面白く思わない。

 これまで、カラオケ店のアルバイト達は誰の言うことも聞かず、例外として、本部長の言うことだけは聞くという話となっていた。

 それなのにアルバイト達は、使えないと悪評を集める僕の指示に従い、まともに仕事もしているという。

 カラオケ店のよい噂を聞く反面、パチンコ店は、当時の景気や政策に大きく影響を受け、これ迄に例がない程に売上は落ちている。

 それだけではなく、S本部長の店舗や新店舗も、会社と従業員とのあいだでトラブルが多発し、入社してくる新人も定着しない。

 そのことで幹部達は、いつも社長に怒られていて、カラオケ店が上手くいっているという話に嫉妬し憤慨する。

 そのことで、S本部長とS専務は『飲食店の経営なんか、バカでも出来る』と語り、更なる人件費の削減を強要し、アルバイトが仕事をしているという話に対しては「高木があまりに使えないから、アルバイト達が苦労しているだけだ」という噂を作り、パチンコ店の一般従業員達へ拡げていく。

 

裏切られる業務の引継

 店長不在の状況から数ヵ月して、Saという女性従業員が、パチンコ店からカラオケ店へと移動してくる。

 パチンコ店でのSaは、アルバイト従業員だったのだけれど、カラオケ店への移動と同時に

正社員となった。

 Saは、僕からカラオケ店の店長業務を教わり引継をした後、カラオケ店の店長となる。

 そうすれば、ようやく僕の退職は決定する筈だったのだが、今回もそういう運びにはならない。

 

 Saの事情を話していくと。

 Saには3人の子供がいて、旦那さんとは離婚した直後だっだ。

 S本部長は、パチンコ店の従業員達へ「カラオケ店の店長をやらないか」と誘っていく。

『あの高木でさえやれる程度の店だ。』

『飲食店の経営なんか、バカでも出来る。』

 そんなことを語り誘うのだが、誰も話には乗らない。

 Saも誘いを受け、一度は断っていた。

 でもSaは、日を改めて「カラオケ店の店長をやります」と主張し、社員となってカラオケ店へ移動してくる。

 ここからの話は、後々にわかっていく話なのだけれど。

 Saはカラオケ店の店長になると主張する前から、妊娠していることに気付いていた。

 相手は、パチンコ店の顧客の一人。

 出産する意識は有って、社員になれば産休等が受けられるので、社員になってから妊娠に気付いたことにしようと、計画的に動いていた。

 だから、会社は僕が退職した以降に働く人員を探していたのだが、Saはそこに乗りながらも、数ヶ月後には産休に入る計画でいた。

 その前提でカラオケ店へやってきたのであり、退職予定の僕や、カラオケ店の状況がどうなろうと関係ないという意識を持っていた。

 

 この時期は、そんなSaの計画等は誰も知らず、Saは仕事を覚える前から店長を名乗り、おかしな行動をとっていく。

 僕も、Saが店長になる前提で仕事を教えていたし、会社の幹部達もSaから「聞いていた話と違う」という言葉や不満が出てくるより先に店長にさせようと煽てる。

 その煽てにアルバイト達も乗っかり、Saと仲良くしていく。

 アルバイト達が僕からの話を無視して、Saの話をよく聞いて仲良くしていくという状況を、僕は広い目で見れば良いことと考えていた。

 その上で、このカラオケ店のアルバイト達の置かれている状況を説明し、悪いことはさせないように指示しなければ、アルバイト達を不幸にしてしまうことも語ってはきた。

 しかし、Saはそんな僕の話や、S課長がアルバイト達をクビにしようとしていることも知りながらも無視して、アルバイト達の立場を守る為に禁止したことを全て解除してしまう。

 それでアルバイト達からは「Saはいい人だ」と支持されるけれど、それ以外の会社の従業員達は、皆でSaに怒りだしていた。

 Saも、怒っている者達に「アルバイト達が悪いことをしてクビにされるなら、それは仕方ないじゃないですか」と語り、アルバイトの立場を守る意思はないことを語っていた。

 そりれでいて、アルバイト達には表面的にばかりいい顔をする。

 そうして、Saの妊娠と産休の話が持ち上がる。

 この時の会社の流れとしては。

 Saのことを社長が嫌いだし、アルバイト達をクビにするよりも、先にSaを会社に居られなくして、自主的に退職するように会社が促していた。

 後々の結果として、Saは産休に入り、子供を産んだ後に退職していく。

 Sa個人は、産休後には職場復帰する意思はあり、アルバイト達にも職場復帰することを語り、アルバイト達もそのことを信じた。

 でも、会社はそれを許さなかった。

 

 Saの影響を受けたアルバイト達は、もう僕の指示には従わなくなっていた。

 Saはまだ店長にはなっていなかったが、アルバイト達にしてみれば、店長の公認の上で悪いことをしているし、それでもクビにされることはなかった。

 だから、目の前の高木の指示なんかは無視しても平気だと認識する。

 それからアルバイト達は、僕のいない場面を選んで、S本部長とSaに対して退職を匂わす発言をする。

 『カラオケ店を辞めるつもりでいて、新しい仕事を始める(始めた)けれど、代わりの新人が入ってきて、その新人が仕事を覚えるまでは、カラオケ店に在籍して協力する。』

 こう聞いたS本部長は、アルバイト達は時期に退職するという認識をする。

 でも、ここにはSaとアルバイト達との示し合わせがあって。

『Saが産休に入った間は退職を曖昧にして在籍は残し、辞めさせられない範囲で最低限の出勤はするけれど、僕には極力協力はしない。

 時期がきて、Saの職場復帰した頃には、アルバイト達は退職を取り止めて、Saの仕事に全面的に協力する。』

 アルバイト達はこういう意識で動き始め、皆で、週末は出勤できないとか、平日でも顧客のいない時間帯ばかりを指定して、シフトの枠さえも無視した希望を出してくる。

 僕はS本部長に対して、アルバイト達のメチャクチャなシフト希望のことや、このままでは週末の営業が出来なくなるであろうことを話し、人員を増やすように求める。

 しかし、S本部長は必要な人員の1/3くらいしか補充せず、退職を臭わせているアルバイト達が退職した後で、残りの必要な人員を補充すると言って譲らない。

 S本部長は殆んどカラオケ店へ足を運ばないので、週末や急な宴会などで、人手不足によるクレームや、本来とれる売上をとれていない状況を把握しない。

 そのS本部長が把握していないことを、僕は説明して理解して貰おうとするが、S本部長はいつも必ず怒鳴り、恫喝して会話を強引に打ち切る。

 S本部長としては、S本部長がカラオケ店を離れたことで、店舗がメチャクチャになって売上が落ちることを望んでいるのだ。

 そして、社長の指示でS本部長がカラオケ店にやってきた時だけ、トラブルが減り、売上が伸び「S本部長がいないと、会社が機能しない」等と言って貰う状況へと、誘導していこうとする。

 こういう人物達の作る組織だから、Saの様な、自分の損得での視点でしか物事を考えない従業員ばかり育つ。

 パチンコ店の会社と従業員とのトラブルや、新人が定着しないとか育たないとかいう悩みも、こういう処に原因がある。

 それさえも理解せず、自分の都合で部下を振り回すことしかしない。

 

 ここからもう少し後に、僕はドラッカーの本を読み始める。

 忙しさや疲労などで、結局は最後まで読まずに今に至ってしまったのだけれど。

 とても勉強になった本だった。

ドラッカー名著集1 経営者の条件

ドラッカー名著集1 経営者の条件

 

 この本なかでドラッカーは、こう書いている。

『中間管理職になる者に必要な資質は、真摯であること。

これ以上のものはなく、これ以下のものもなく、これに尽きる。』

 この会社のことは、僕の置かれている状況に対しても、不足しているのはこういうことだろうと思った。

 この職場の独特な歪みだと思っていても、この事柄は、この本でよくないと書かれている内容の範疇に収まっていて、ビジネス書というのは、本当に勉強になるものだと実感したものだ。