絵と猫とぐだぐだ ~髙木元就

雑記ブログです。趣味で絵を描いています。漫画やイラストなども含めて、幅広く絵の好きな人に読んで貰いたいです。

同じことの繰返し3 No.85

帰宅

 講評会から、僕は「ふざけんな!」と怒鳴り、アトリエ(教室)を出ていく。

 それからずっと苛々しながら、大学から家へと帰っていった。

 

 幾ら自分の反省するべきことを考えようとしても、大学の教員や同級生達の理不尽な言動ばかり頭を過る。

 僕は、誰よりも教員達の言葉に耳を傾けてきたし、そのことを深く理解しようと、繰返し質問もしてきた。

 絵に費やしてきた労力等でも、僕の上を行っている人物などはいないと考えている。

 それでいて、何で僕はこんな状況に追い込まれてしまうのだろう。

 僕は、この大学に来たこと自体が失敗だったとしか考えられない。

 いつも苛々してばかりで、いつかは堪えきれず、誰かをあやめてしてしまうかもしれない。
 だから、この怒りを抑えなくてはと、歯を食い縛り、既に腫れて皮膚の裂けている拳を、繰返しコンクリートの壁等に叩き付けたりもしてきた。
 これ迄は、そんな事をした痛みで自分の怒りを誤魔化してきた。
 しかし、この場面ではその程度のことで怒りは収まらない。

 僕は自分自身へ、『冷静になれ』と何度も言い聞かせながら自宅へ帰っていった。

 今直ぐに退学することが、自分にとっては一番よい選択だ。
 それが判っているのに、母のことを考えると、そう出来ずにいる。

 いつも胃はキリキリと痛み、夢のなかでは何度も繰り返し自分や母はしんでいく。
 僕がこの美術大学を退学してしまえば、母や僕の死は夢ではなくなる可能性も高い。

 こんな風に苦しみ悩んでいる僕を、同級生達はいつも面白がっている。

 …いやいや、考え直せ。
 たぶん、今の自分は冷静な考え方などしていなくて、狂った価値基準で物事を考えているのだろう。

 今の僕は何をどう考え、どうすべきなのだろうか…

 …暗く考えるのはいつもの事だが、今回ばかりは、考え直すことも無いのではないか?


 自宅の建物に近付くと、子猫が僕を見付け、駆け寄ってくる。

 この頃に仲良くなった野良の子猫で、名前を『割田さん』と呼び、よく食べ物をあげていた。
 急いで駆け寄って来る割田さんは、減速できずに一度僕の横を走り過ぎていく。
 そして、走り過ぎてから僕のもとへ振り返って戻り、足へすり寄って来る。
 子猫らしい仕草のひとつひとつが、とても可愛らしい。

 割田さんにご飯をあげ、抱っこしたり、少し遊んだりした。

 ずっと、心には大学でのことが引っ掛かっている。
 それでも割田さんと接していると、それまでの怒りは収まっていく。

 割田さんと接したことで十分な気分転換が出来、もう1度K先生(男子)と話をしようと考えた。

 

再度の会話

 僕は大学の研究室に行き、K先生(男子)を見付けて話しかける。

「講評会でのやり取りが納得いかないので、もう一度話をしてくれませんか。

K先生(男子)は何も知らないと言ってましたが、やっぱり何か知ってますよね?」

 もう関係の修復は手遅れだと思いながらも、それでも前向きな話をしようと、僕なりに丁寧な言葉を心がけていた。

 K先生(男子)は僕に対して声を荒気ながら、こう言ってくる。
「お前は神聖な講評会を侮辱していた。
あんな行動をとるなら、さっさとこの学校を辞めて、どこへでも好きな所へ行ってしまえ!」

「侮辱なんかしていませんよ。

僕は絵に対して、一生懸命取り組んでいるから、結果としてあんな発言になっただけです。

先生達のこれまでの指導がおかしいから、あの講評会でのやりとりもあんな感じになった訳じゃないですか。

講評会でも言いましたが、僕はS先生との約束があって、あの講評会が始まるのをずっと待っていたのです。

S先生は講評会を欠席してその約束を果たさなかったので、そのことについて、何かを知っていますかと僕は質問しました。

それに対して、K先生(男子)とA先生(女子)は、『人の話を聞かないから、仕方なく』とか『全部君の勘違いだ』と返してきた訳じゃないですか。

その時点から、K先生(男子)の言葉はおかしくないですか。」
K先生(男子)
「いいや、講評会でのお前の行動はそうではなった。
お前は最初から、絵を見せる気なんか無いと言って講評会を侮辱していた。
それに対してこっちは、そんなこと言わないで見せてくれと何度もお願いしていたんだ。
それでようやく見せてくれたと思ったら、訳のわからんことを言って叫びながら出ていったんだろ。」

「それは違います。
前向きなきんとした話をする為に、話をしてくれませんか。」
K先生(男子)
「いいや、そんなことをするつもりはない。
そもそも、裸婦の課題の時みたいに、みんなが真面目に一生懸命絵を描いてる最中に、突然叫んで暴れだす様な奴に、何かを話したり教えたりすることは出来ない!」

「だから、その話も事実は違いますよ。

あの場にK先生(男子)はいなくて、それは誰かから聞いただけの話じゃないです。

それに対して、僕は違うと言っているのに、何でそのことを事実として話を進めてしまうのですか?

この話も講評会の話もおかしいじゃないですか!」
K先生(男子)
「いいや、お前はあの時暴れだして、まわりの生徒が必死に止めたんだ!
あの時は、何人もの生徒が研究室に来て、高木がキレて暴れているから助けてくださいと言いに来ていたんだ。
お前みたいな奴はいらないから、さっさとこの学校を辞めろ!」

「だから、それは事実は違うと何度も言っているじゃないですか!
あなた方の都合で事実を歪めないでくださいよ!」
K先生(男子)
「いいや、あの時は俺達から高木に対して事情を聞いたが、お前は今みたいに俺達を侮辱するばかりで何も答えなかった。
嘘をついているのは高木だ!
お前みたいな奴はいらないし、話しももういいから、さっさとこの学校を辞めろ!」

気付くと、僕とK先生(男子)は怒鳴り合っていた。

 この怒鳴り合いのやりとりに、A先生(女子)は後からやってきて、K先生(男子)に荷担する。

A先生(女子)
「高木くんの言っていることは、何もかも全て勘違いです!

私達(教員達)や生徒のみんなも、高木くんの為に色々と話しかけているのに、高木くんはいつも勝手に勘違いして話を聞かないんじゃないですか!」
K先生(男子)
「ほら、お前の考えていることは勘違いだと言ってるじゃないか。」

ここからは、K先生(男子)とA先生(女子)のふたりが僕を怒鳴って責め立て、僕も怒鳴って反論し続ける。

 A先生(女子)の話からは~

 僕は暴力的な性格で、話しかけてもいつも暴言で返答する生徒である。

 同級生達はいつも僕の存在に怯え、僕が居るだけで生徒全体が萎縮している程だという。

 教員達が課題についての助言を言っても、乱暴な言葉で反発するばかりで、まともに耳を傾けたこともない。

 裸婦のデッサンの時に、僕が暴れたと語られている件で、S先生と僕と一部の生徒を交えた話し合いを行い、全ては僕の勘違いで暴れたということで話はつき、そのことでこの問題は解決したのだ。

 いつまでも終わった話を持ち出して反論していて、性格がしつこい。

 などと語る。

 僕はそのA先生(女子)の話を「自分等の都合に合わせた嘘をついている」と何度も反論する。

  K先生(男子)は「A先生(女子)やS先生や、他の生徒達もみんな信頼できる人物ばかりだけど、高木だけは信頼できない」と怒鳴る。

 K先生(男子)は、これまでには数えきれない程、僕の悪い噂を聞いてきた。

 火のない所に煙はたたないという言葉があって、僕が悪い人物ではないならば、そんな噂も一才流れることはないと言い張る。

 A先生(女子)の話に合わせてK先生(男子)も一緒になり、僕の語る話は全て勘違いと嘘ばかりだと語る。

 

 同じ内容の会話を繰り返した末の結論として。

 事実問題はどうであろうと、僕の存在は、真面目に一生懸命学ぼうとしている多くの生徒達の妨害になっている状況にある。

 そんな僕をこれ以上大学に来させる訳にはいかないとして、これからアトリエ(教室)は利用させないし、大学(日本画校舎)にも出てくることも許さない。

 日本画の生徒達とも、これから一才関わってはいけない。

 それ等が気に入らないのなら、さっさと大学を辞めろ、という内容で締め括られる。

 他にも細々とした話はあるのだけれど、それ等も似たり寄ったりの話ばかりだ。

 

 真面目に一生懸命努力している生徒の為に、お前(僕)は邪魔なんだ!

 という内容に反論できなくなって、僕はそれ以上の会話を「わかりました」と言って諦める。

 僕自身、この会話をする以前から、もう彼等から何かを学べない状況にあることは理解していた。

 アトリエ(教室)の制作場所に関しても、利用しない方が制作は進む状況にあり、その名文を貰った様なものだ。

 K先生(男子)の言い分からは、大学を辞めるしかない内容ばかりを命令しているのは理解している。

 しかし、大学の件で、母が『一緒にシのう』と僕によく語ってしまう状況を考えると、大学を辞める訳にいかず、図々しく大学に居座ることしか選択できなかった。

 冷静になって考えれば、こんな教員達の立場を潰して追い込むような手段など、幾らでも考えはつく。

 それでも僕は冷静ではなかったし、僕はモラルを持って彼等(教員や同級生達)と接し、いつかはわかり合える日が来ることを信じていた。

 そういう自身の考え方を、いつまでも崩せなかった。