絵と猫とぐだぐだ

雑記ブログです。趣味で絵を描いています。漫画やイラストなども含めて、幅広く絵の好きな人に読んで貰いたいです。

動物画制作2 No.49

 この時の動物画の課題である猿の絵についても、僕は日本画の影という問題を、教員達とのやり取りから学びたい気持ちを持っていた。

 ただ、そこには複雑な気持ちも絡んでいる。

 当時の僕には、S先生やI先生やA先生(女子)の行う僕への指導や接し方に対して、どうしても悪意を感じてしまう。

 考え方の違いや性格の不一致で、嫌われている部分は仕方ないだろう。

 しかし、その嫌われている処から来る悪意によって、大学の課題のなかで、本来はやっても良いことを禁じられている様に思えてしまう。

 そんな悪意の籠ったいい加減な指導を受けたくないという気持ちに対して、大学の助教授(I先生は非常勤講師ではあるが)という立場の者が、そんな程度の低いことをする筈がないことを、僕は信じたい気持ちで葛藤していた。

 もし悪意があったとしても、絵を描く者どうしであるのだから、どんなに嫌われていても、どれだけ口論していても、いつかは必ず何処かで、絵を通して解り合える時が来ると信じていた。

 そういう僕のお人好しな処を、同級生達は一年生の頃から「世間知らず」とバカにして、この時以降も、日増しに関係は悪くなり続けていく。

 そういう状況と悪循環を把握しても、僕自身は、そんなお人好しで世間知らずな考え方を捨てられず、 改められず、苦しんでいくことになる。

 

盗難とその対処

 1年次の後半から、僕は課題を自宅で制作していた。

 大学で制作しない1番の事情は盗難問題で、2番目は、教員達の理解できない指示によって絵をメチャクチャにされ、そこからもトラブルへ発展していくからだ。

 そんなこともあって、S先生からは「制作途中の絵を見せろ」と言われ、制作中の絵を自宅から大学の研究室へ持っていった。

 今回は、それからの話。

 

 この時は、夕日を背景に蚤取りをしている2頭の猿を描いていた。

 その夕日と逆光状態にある猿を題材にしていることが、日本画ではやってはいけないことだという。

 そのことで、絵を下図相談の処からやりなおせ、と注意される。

 下図段階から夕日を描くことは知らせていた事や、この頃に東京芸大の学長である平山郁夫等も、夕日や逆光の絵を描いていること等、僕は幾つかの反論はしていた。

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 それでも「俺(S先生)がダメと言ったらダメ」と言って、これ以降に他の教員達から許可を貰ったとしてもダメだと語る。

 これからやり直すとしても、提出日まで1週間を切っている状態でもあり、夕日を無くした絵にして制作を続ける許可を貰う。

 話はそれだけでは終わらず、S先生はこう続ける。

 「それから、制作は学校でしろ」

 このS先生の話に対して、僕は意見する。

 学校で制作しない理由のひとつは盗難であり、もうひとつは教員達の指示や接し方と、そこから派生している問題であった。

 「これ以上関係を悪くしたくない気持ちから、これ迄は隠していたことですが…」という切り出しから、僕は話し始めた。

  1年生の前半から、画材の盗難は始まっていて、僕の画材ばかりが頻繁に画材が消えることで、制作を進められない場面が多発したこと。

 時折、明らかに僕の画材を持ち去って使っている人物をみつけていたことなんかも話した。

 生徒の名前は挙げなかったけれど、僕の画材を盗んだことに注意をすると、僕のは画材を持ち去ったことは認めながらも『人聞きの悪いことを言うな』と反論してきて、口論となる場面がある。

 以前に、S先生とA先生(女子)へ聞かせた話で、K先生とS先生とA先生(女子)のあり方によって、僕は同級生達との人間関係は険悪なものになっていった。

S先生とA先生(女子)は、僕に対してそこを改める約束をしているのに、以前と変わらないことをしていること。

 これ等の行為に悪意を感じていていること、等も話した。

 

「高木の言っていることは全部が詭弁で、実際にはそんなこと一切ないんだろ?

 どんな事情があったとしても、これからは大学で制作をしないと単位は与えない。」

 そんな言葉が帰ってきて、僕は怒り出す。

 「お前(S先生)の言っていることはイチイチおかしいだろ。

 学校で制作できなくなったのは、お前の暴言と、それを見て面白がってる生徒がやってることだぞ。

 改めるって俺と約束しておきながら、何を改めたっていうんだよ。

 この問題、全部お前ら教員のせいじゃねぇか。」

 これまでに、僕はこんな反論や怒り方をしたことがなかった為、S先生も驚いたのだろう。

 詭弁という言葉を使ったことは謝ってきた。

 今度から盗難にあった場合は、教員達へ報告すれば必ずその盗難に対処することを約束するから、学校で課題を制作しなさい、という指示を受けた。

 

 学校のアトリエ(実技の教室)には、各個人に割り振られた制作場所がある。

 S先生から指示があった日の翌日から、僕はそこへ、自宅と大学を何度も往復して画材を運んでくる。

 前日でS先生に見てもらった絵はそのまま置いていて、そこへ絵具や筆などを持ってきてから置き、次は絵皿や本画制作前に描いたスケッチ等を持ってくる。

 すると、僕の画材や絵は全て無くなっていて、僕の制作場所はToが使う為に画材がひろげられていて、本人はいない。

 まずはどういうことなのかを聞こうと、Toを一時間ほど待った。

 制作場所が隣だということで、僕の場所と合わせて広く場所を使うつもりだったとのこと。

 突然現れた僕の絵や画材は、誰かが荷物置き場として利用しているものだと考え、全て廊下に出したらしいのだが、その画材の全てが消えてしまっていた。

 廊下に出したToも、僕の画材の行方は何も判らない、自分は悪くないと怒っている。

 僕はアトリエにいた生徒全体に問いかける。

 「ここにあった画材、誰かしらない?」

 しかし、誰も反応はしない。

 このToの始めたことに、僕は未だに理解はしていない。

 前日までは、僕の制作場所には何もない状況で、Toも僕の制作場所に手を伸ばすことはしていなかった。
 そこへ僕が多くの画材を運んでくる。
 そうして僕の画材が置かれ始めた丁度その時に、わざわざその画材を廊下に出し、僕のその場所までを利用しようと思い立つだろうか。

 Toはこの事に悪意など無かったと言っているが、本当は悪意や何か意図するものがあったのではないか。

 その後、僕はS先生を探して画材や絵の紛失とその経緯を伝えた。

 紛失問題が起きた時に何かしらの対応をしてくれると約束を交わしているのだから、S先生は何かをしてくれる筈だった。

 しかし、S先生は僕を疑う。

「どうせそれもお前の詭弁だろ?」
 という言葉から始まり、盗難の話は最初から嘘で、人間関係が悪くなったのも、絵が上手く描けない言い訳ばかりしているからだと話始める。
 そして、今回の盗難の話など関係なく、どんな事情があろうと、学校で制作しないと単位をやらないし、提出期限も1日でも遅れたら、その時点から提出物は受け取らないと言う。

 この時に制作していた「動物画」の課題は2ヶ月近くもかけて制作しているもので、提出期限も残り一週間もなかった。

 紛失した画材も、買い直すにはそれなりの価格はする。
この課題を制作するための紙(麻紙)だけでも4~5千円はした。

 本来ならば、その課題制作用の紙は大学側から用意される。
 その費用も大学の学費の中から出ていて、生徒の手元に渡される前にも500円の負担を負わされる。

 この500円は日本画の教員たちが徴収していて、その徴収分から日本画での共用備品を購入しているとのこと。
 今回の僕の絵の紛失によって購入しなければならない紙は、大学では手配してもらえない。

 美術大学へ入学してから、これまでの一年間で買い足してきた絵筆や絵具等も、殆どが消えてしまった。

 この時点で僕の持っているお金を全て使ったとしても、この課題を制作する為の画材は集まらない。
 仮に画材がどうにかなったとしても、提出日までは一週間を切っている。

 僕はこの状況に焦り困ってS先生へ報告や相談をしているのに、それら全てが僕の嘘で何も対処はしないと言う。

 この時、僕は大学内で初めて怒鳴った。

「何でそんな話になるんだ!
俺が学校に画材を持ってくる前に、約束したじゃねぇか!
 俺は盗難の可能性があると言っているのに、お前(S先生)が学校で制作しないと単位をやらないと脅してきたから、こっちはそれに従ったんだぞ。
 昨日約束したんだから、俺の画材や制作途中の課題も全部今すぐ見つけてこいよ!
 その上でなら、期限内に絶対に提出してやる!」

S先生は自分の発言を改める気はなく、Toから事情や状況を確認しようとする意思もなく「盗難も、盗む奴よりも盗まれる奴の方が悪い」「自己管理が出来ていない」等と僕だけを責め立ててくる。

  「ふざけんな、お前(S先生)の言っていることは嘘ばかりじゃねぇか!」

 何の対処もしないというS先生に対して、僕はこんな言葉で怒鳴り、S先生との会話や、この時の課題の制作も諦めてしまう。

 

 『提出期限が1日でも過ぎたら、この課題は受け取らない』

 等と言われていたから、改めて最初から描き直す考えは持てなかった。

 仮にやろうとしても、画材を買うお金さえ足りない状態で、材料を用意し準備するだけで期限は迎えてしまう。